ペット保険お役立ち情報
犬・猫の熱中症治療費はいくら?
ペット保険で備える夏の健康管理

夏の暑さが年々厳しくなる近年、大切な家族であるペットの熱中症リスクも高まっています。環境省の発表によると、日本の夏の平均気温は上昇傾向にあり、熱中症による健康被害は人間だけでなく、犬や猫にとっても深刻な問題となっています。
特に心配なのが、万が一熱中症になってしまった場合の治療費です。「うちの子が熱中症になったらいくらかかるの?」「高額な治療費を払えるだろうか?」「ペット保険は必要?」といった不安を抱える飼い主さんも少なくないでしょう。
この記事では、犬・猫の熱中症治療にかかる費用相場から、効果的な予防方法、緊急時の対処法、そしてペット保険での備え方まで、夏の健康管理に必要な情報を詳しく解説します。大切なペットを熱中症から守り、万が一の時にも適切に対応できるよう、ぜひ参考にしてください。
- 目次
ペットの熱中症の基礎知識
犬・猫が熱中症になりやすい理由
犬や猫は人間と比べて熱中症になりやすい体の構造を持っています。最も大きな違いは、体温調節の仕組みです。人間は全身に汗腺があり、汗をかくことで効率的に体温を下げることができますが、犬や猫の汗腺は肉球など限られた部分にしかありません。
犬の体温調節
主に「パンティング」と呼ばれる口を開けてハァハァと呼吸する方法で体温を調節します。しかし、この方法は湿度が高い環境では効果が低下してしまいます。
猫の体温調節
犬ほど激しいパンティングをしませんが、グルーミング(毛づくろい)で唾液を体に付けて気化熱で冷やそうとします。
さらに、全身を覆う被毛は冬には保温効果を発揮しますが、夏には放熱を妨げる要因となります。特に長毛種や毛量の多い犬種・猫種は、熱がこもりやすく注意が必要です。
また、散歩時には地面からの照り返しも大きな問題となります。アスファルトの表面温度は気温より20度以上高くなることもあり、地面に近い位置を歩く犬や猫は、人間以上に暑さの影響を受けやすいのです。
このように犬や猫は人間に比べて熱中症になりやすいリスクがあります。
そこで、特にペットを飼っている方に気を付けていただきたいのが、車内にペットを残さないことです。気温35℃の炎天下に駐車した車内の暑さ指数は、窓を閉め切った状態でエンジン停止後、わずか15分で人体にとって危険なレベルに達します。
実際にペットを車内に残したままのキー閉じこみの事案は発生しています。特に気温の高い日には、わずかな時間でもペットを車内に残さないよう注意が必要です。
熱中症発生リスクや症状と危険度
環境省の熱中症リスクカレンダーが示すように、暑さ指数(WBGT※)31℃を超える危険レベルの日は7月・8月に集中し、この期間は熱中症による健康被害が急増します。しかし、WBGT25℃から警戒レベルとなることを考慮すると、梅雨明けの6月から秋の10月中旬まで、実に5か月近くにわたって熱中症への注意が必要な期間が続くことになり、ペットの健康管理においても長期的な対策が求められています。
- 暑さ指数(WBGT)とは?
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熱中症を予防することを目的として1954年にアメリカで提案された指標です。
単位は気温と同じ摂氏度(℃)で示されますが、その値は気温とは異なります。暑さ指数(WBGT)は人体と外気との熱のやりとり(熱収支)に着目した指標で、人体の熱収支に与える影響の大きい ①湿度、 ②日射・輻射(ふくしゃ)など周辺の熱環境、③気温の3つを取り入れた指標です。
熱中症は進行の速さによって命に関わることもある危険な状態です。初期症状を見逃さず、適切に対処することが重要です。
- 初期症状(軽度)
-
- いつもより呼吸が荒い
- よだれが多い
- 元気がない
- 食欲低下
この段階で涼しい場所に移動させ、水分補給をすれば回復することが多いです。
- 中等度の症状
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- 嘔吐や下痢
- ふらつき
- 40度以上の体温の上昇
- 歯茎が真っ赤または青白い
この段階では動物病院で治療を受けることをおすすめします。
- 重度の症状
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- 意識がもうろう
- けいれん
- 失神
- 41度以上の体温
一刻を争う緊急事態です。迅速な治療開始が生死を分ける可能性があります。至急病院を受診する必要があります。
特に体温が41度を超えると、臓器に深刻なダメージが生じ始めるため大変危険です。腎臓や肝臓の機能不全、血液凝固異常(DIC)などの合併症を引き起こし、最悪の場合は死に至る可能性もあるので、症状が軽度のうちに異変に気付き対処できるようにしましょう。
犬・猫の熱中症の治療費の相場は?
実際に熱中症により動物病院で治療を受けた場合、治療費はいくらぐらいかかるのでしょうか。
軽症の場合の治療費
熱中症の初期段階で動物病院を受診した場合、主に外来での治療となります。一般的な治療内容と費用の目安は以下の通りです。
治療項目 | 内容 | 費用目安 |
---|---|---|
診察料 | 初診・体温測定・聴診・触診 | 2,000円〜5,000円 |
血液検査 | 脱水の程度・ 臓器機能確認 |
5,000円〜10,000円 |
皮下点滴 | 脱水改善のための補液 | 3,000円〜5,000円 |
静脈点滴 | より効果的な 補液治療 |
5,000円〜10,000円 |
投薬 | 吐き気止め・胃腸薬・抗生物質 | 1,000円〜3,000円 |
合計 | 軽症の 熱中症治療 |
15,000円〜35,000円 |
重症・入院が必要な場合の治療費
重症化した熱中症では、集中的な治療と24時間体制での管理が必要となり、治療費も大幅に増加します。
治療項目 | 内容 | 費用目安 (1日あたり) |
---|---|---|
入院 基本料 |
一般病棟での 管理 |
3,000円〜10,000円 |
ICU管理 | 集中治療室での 24時間管理 |
20,000円〜50,000円 |
持続静脈 点滴 |
継続的な補液・ 薬剤投与 |
10,000円〜20,000円 |
酸素吸入 | 呼吸困難時の 酸素療法 |
5,000円〜15,000円 |
血液検査 | 毎日の状態確認 | 5,000円〜10,000円 |
透析治療 | 急性腎不全に 対する治療 |
50,000円〜100,000円 (1回) |
合計 | 3日間入院の場合 | 100,000円〜 300,000円以上 |
想定される熱中症の治療費例
具体的な症例を想定し、かかる治療費例を見てみましょう。
症例1:軽症の小型犬(5歳のトイプードル)
散歩後に呼吸が荒くなり来院。体温39.5度、軽度の脱水。
- 診察料:3,000円
- 血液検査:8,000円
- 皮下点滴:4,000円
- 投薬(吐き気止め):1,500円
- 合計:16,500円
症例2:中等症の中型犬(7歳の柴犬)
嘔吐を繰り返し、ふらつきがあり来院。体温40.5度、中等度の脱水。
- 診察料:3,000円
- 血液検査(詳細):12,000円
- 静脈点滴(半日):8,000円
- 投薬各種:3,000円
- レントゲン検査:8,000円
- 合計:34,000円
症例3:重症の高齢猫(12歳の雑種猫)
意識がもうろうとした状態で来院。体温41.2度、重度の脱水、腎機能低下。
- 初診料・緊急処置:10,000円
- 血液検査(初日):15,000円
- ICU管理(3日間):90,000円
- 持続点滴(3日間):45,000円
- 投薬・注射薬:20,000円
- 追加検査(エコー等):15,000円
- 合計:195,000円
実際の治療費は地域による費用差なども考慮する必要があります。都市部の動物病院は地方と比べて1.2〜1.5倍程度高額になる傾向があります。また、夜間や休日の緊急診療では、通常の1.5〜2倍の料金設定となることが一般的です。
犬・猫の熱中症の予防対策
日常生活での注意点
散歩時間の工夫
夏場は早朝(6時〜7時)か夕方以降(19時以降)の涼しい時間帯を選びましょう。アスファルトの温度は手の甲で5秒間触れてみて確認し、熱いと感じたら散歩は控えるべきです。
室内環境の整備
エアコンを使用して室温を26〜28度に保ち、湿度は50〜60%程度に調整します。ペットが自由に移動できるよう、涼しい場所と暖かい場所を選べる環境を作ることが大切です。
水分補給の重要性
新鮮な水を複数の場所に置き、いつでも飲めるようにします。水入れは毎日洗浄し、清潔に保ちます。食事にウェットフードを取り入れることで、食事からも水分補給ができます。
暑さ指数(WBGT)の活用方法
環境省が提供する暑さ指数(WBGT)は、熱中症予防の重要な指標となります。WBGTは気温だけでなく、湿度、輻射熱を総合的に評価した指標で、より実際の体感に近い暑さを表してくれます。
環境省の「熱中症予防情報サイト」では、全国各地のWBGT値をリアルタイムで確認できます。WBGT値は以下の5段階で危険度が示されています。
ほぼ安全 | 21未満 | 適時水分補給 |
---|---|---|
注意 | 21以上25未満 | 積極的に水分補給 |
警戒 | 25以上28未満 | 積極的に休息 |
厳重警戒 | 28以上31未満 | 激しい運動は中止 |
危険 | 31以上 | 運動は原則中止 |
ペットの場合、人間より地面に近い位置にいるため、表示されている数値より2〜3度高い環境にいると考えて行動することが大切です。WBGT値が「警戒」以上の時は、散歩時間を短縮し、「厳重警戒」以上では散歩を控えることをおすすめします。
犬・猫の熱中症対策グッズ
市販されている熱中症対策グッズを上手に活用することで、より効果的な予防が可能です。
冷却グッズ
冷却グッズは様々な種類があります。冷却マットは電気を使わずに体温を下げる効果があり、ペットが自由に使えるよう複数枚用意すると良いでしょう。冷却ベストは散歩時に着用させることで、体温上昇を抑制できます。ただし、濡れたままの使用は皮膚トラブルの原因となるため、適度に乾燥させることが必要です。
携帯用給水器
携帯用給水器は外出時の必需品です。折りたたみ式のボウルタイプ、ボトル一体型、自動給水機能付きなど様々なタイプがあります。ペットの大きさや性格に合わせて選び、日ごろからペットが使い慣れておくように事前に使用しておくことが大切です。
遮熱・冷感素材の活用
車内用の遮熱シートは移動時の暑さ対策に有効で、冷感素材の服は通気性が良く、体温上昇を抑える効果があります。ただし、服を嫌がるペットに無理に着せることは逆にストレスとなるため、ペットの性格を考慮して使用しましょう。
緊急時の対処法
応急処置の手順
熱中症の症状を発見したら、迅速かつ適切な応急処置が必要です。以下の手順で対処しましょう。
- STEP1:涼しい場所への移動
- まず第一に、エアコンの効いた室内や日陰など、涼しい場所に移動させます。
屋外の場合は、木陰や建物の陰を探し、風通しの良い場所を選びます。
- STEP2:体温を下げる処置
- 水で濡らしたタオルを体に当てます。特に首、脇の下、内股など太い血管が通る部分を冷やすと効果的です。扇風機やうちわで風を送り、気化熱を利用して冷却効果を高めます。
可能であれば、体温計で体温を測定し、39度以下になるまで冷却を続けます。
- STEP3:水分補給
- 意識がはっきりしている場合は、少量ずつ水を飲ませます。
一度に大量に飲ませると嘔吐の原因となるため、少しずつ与えることが重要です。
- NG:行ってはいけない処置
-
氷水に全身を浸ける:
急激な体温低下により血管が収縮し、かえって体内の熱が逃げにくくなります。意識もうろう時の強制給水:誤嚥の危険があります。
アルコールで体を拭く:
中毒の危険があるため絶対に行わないようにしましょう。
動物病院への連絡タイミング
以下の症状が一つでも見られたらすぐに動物病院へ連絡しましょう。
- 体温が40度を超えている
- 意識がもうろうとしている
- 嘔吐や下痢を繰り返す
- けいれんが起きている
- 呼吸が異常に速い、または遅い
搬送時の注意点
動物病院への搬送時も、継続的なケアが必要です。
移動中の体温管理
車内のエアコンを最大限に効かせ、濡れタオルを体に当てた状態を維持します。可能であれば、保冷剤をタオルで包んで首や脇に当てますが、直接当てると凍傷の危険があるため必ずタオルで包みます。窓を少し開けて換気を確保し、新鮮な空気を取り入れることも大切です。
症状の記録
症状の記録は治療に役立つ重要な情報となります。発症時刻、発見時の状況、与えた水の量、嘔吐の有無と回数、意識レベルの変化などを記録またはスマートフォンで動画撮影しておくと、獣医師の診断に役立ちます。
獣医師への伝達事項
獣医師へ正確な情報を伝えることも治療の際に重要な点です。以下の情報を正確に伝えるようにしましょう。
- 発症からの経過時間
- 発症時の環境(屋外/屋内、気温など)
- 行った応急処置の内容
- 現在の症状
- 既往歴や服用中の薬の情報
搬送中も電話で動物病院と連絡を取り、到着予定時刻を伝えることで、病院側も受け入れ準備を整えることができます。
ペット保険での備え方
熱中症治療に対する保険適用
多くのペット保険では、熱中症の治療費は補償対象となっています。ただし、保険会社や契約プランによって補償内容は異なるため、詳細を確認することが重要です。
一般的な補償内容として、診察料、検査費用、処置・手術費用、投薬費用、入院費用などが含まれます。補償割合は50%、70%、90%、100%などのプランがあり、選択した割合に応じて保険金が支払われます。
例えば、70%補償のプランで30,000円の治療費がかかった場合、21,000円が保険金として支払われ、自己負担は9,000円となります。
各社の補償割合についての詳細は「ペット保険で補償される割合は?」よりご確認ください。
ただし、多くの保険には免責金額や支払限度額が設定されています。年間の支払限度額、1日あたりの限度額、通院・入院・手術それぞれの限度回数などを確認しておく必要があります。
また保険金請求の流れも保険会社によって異なります。指定の動物病院で治療を受けた場合、自己負担分のみの支払いで済む便利な窓口精算が可能な保険会社もあります。 各社の保険金請求方法の詳細は「ペット保険の保険金請求方法」よりご確認ください。
ペット保険加入のメリット
ペット保険に加入することで得られるメリットは、単なる経済的な補償だけではありません。
経済的負担の軽減
重症の熱中症では20万円を超える治療費がかかることもあります。保険に加入していれば、この負担を大幅に軽減でき、貯蓄を大きく減らすことなく治療を受けさせることができます。
迅速な治療判断
「治療費が心配で様子を見てしまう」という判断の遅れは、症状の悪化につながる可能性が高いです。保険に加入していれば、費用の心配をせず早期に受診でき、結果的にペットの健康を守ることにつながります。
予防医療への意識向上
保険会社によって、ペット保険契約者向けに健康相談サービスや予防に関する情報提供を行っています。定期的な健康診断の重要性を認識し、病気の早期発見・早期治療につながることも多いです。
このようにペット保険に加入することで得られるメリットは様々あります。ペット保険を選ぶ際には比較するポイントを理解し、ご自身が安心できるプランを選択することが重要です。
ペット保険の選び方のポイントは「ペット保険選びのポイント」を参考にしてください。
また、詳しい人気商品の補償や保険料の比較は下記ランキングページをご活用ください。
まとめ:大事なペットも夏の熱中症に備えるために
犬や猫の熱中症は、適切な知識と準備があれば予防できる病気です。しかし、万が一発症してしまった場合、治療費は軽症でも数万円、重症化すれば20万円を超えることもあり、経済的な負担は決して軽くありません。
熱中症予防の基本は、暑い時間帯の外出を避け、室内環境を整え、十分な水分補給を心がけることです。環境省の暑さ指数(WBGT)を活用し、根拠に基づいた行動を取ることで、リスクを大幅に減らすことができます。 それでも熱中症の症状が現れた場合は、迅速な応急処置と動物病院への搬送が命を救うカギとなります。日頃から緊急時の対処法を理解し、かかりつけの動物病院の連絡先を確認しておくことが大切です。
そして、これらの備えと合わせて検討したいのがペット保険です。保険に加入することで、高額な治療費への不安から解放され、ペットの健康を第一に考えた判断ができるようになります。また、予防への意識も高まり、結果的にペットの健康寿命を延ばすことにもつながります。 これらの準備を整えることで、大切な家族であるペットと安心して夏を過ごすことができると幸いです。
この記事の情報は一般的な目安であり、実際の治療費は動物病院や地域によって異なります。ペットの健康に関する判断は、必ず獣医師にご相談ください。
- 執筆者
- 染谷 弥幸(1級ファイナンシャル・プランニング技能士/株式会社アイ・エフ・クリエイト)
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