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犬・猫の歯周病対策と予防法!
治療費の実態や保険適用はできる?

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犬や猫の健康寿命を延ばすためには、「歯の健康管理」がとても重要です。歯周病は犬や猫にとって決して珍しい病気ではなく、年齢を重ねるごとに多くのペットが発症リスクを抱えるようになります。放置すると口臭や歯のぐらつきだけでなく、重症化すれば心臓や腎臓など全身の健康にも影響を及ぼすことがあります。
本記事では、犬・猫の歯周病予防の方法から、治療にかかる費用、保険で補償されるかどうかまで詳しく解説します。大切な家族の一員であるペットの口腔ケアについて、ぜひ正しい知識を身につけてください。
- 目次
犬・猫の歯周病とは?放置すると命に関わる重大な病気
犬や猫の歯周病は、歯垢に含まれる細菌によって歯茎が炎症を起こし、徐々に歯を支える組織が破壊される病気です。人間の歯周病と基本的なメカニズムは同じですが、ペットの場合は症状に気づきにくく、発見が遅れがちという特徴があります。
歯周病の症状と進行段階
歯周病は段階的に進行します。初期段階では歯茎の赤みや軽い腫れから始まり、進行すると以下のような症状が現れます。
- 軽度の症状
-
- 歯茎の赤みや腫れ
- 口臭の悪化
- よだれの増加
- 食事中に痛がる様子
- 重度の症状
-
- 歯のぐらつき
- 歯茎からの出血
- 食欲不振
- 膿の発生
- 歯が抜け落ちる
【最新データ】犬・猫の歯・口腔疾患に罹りやすい犬種・品種
歯・口腔疾患の発症リスクは、犬種や猫の品種によって差があります。ここでは、アニコム家庭どうぶつ白書の最新データをもとに、歯周病や歯肉炎の罹患リスクが高い傾向にある犬種・品種をご紹介します。
犬の場合
アニコム家庭どうぶつ白書2024のデータによると、犬における歯・口腔疾患の請求割合は全体で5.6%となっています。特に小型犬に多く見られる傾向があります。
- 他の犬種に比べ歯周病や歯肉炎に罹りやすい犬種
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トイ・プードル
▼歯周病/歯肉炎(乳歯遺残に起因するもの含む)の請求
年間診療費の平均値 58,657円 小型犬特有の歯の密集により歯垢が溜まりやすい
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ミニチュア・ダックスフンド
▼歯周病/歯肉炎(乳歯遺残に起因するもの含む)の請求
年間診療費の平均値 61,221円 歯根が長く、歯並びがやや不均等なため、歯垢や汚れが残りやすい
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パピヨン
▼歯周病/歯肉炎(乳歯遺残に起因するもの含む)の請求
年間診療費の平均値 55,634円 細い顎の構造により歯周病が進行しやすい
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イタリアン・グレーハウンド
▼歯周病/歯肉炎(乳歯遺残に起因するもの含む)の請求
年間診療費の平均値 62,482円 歯が密集しやすく、口腔内が狭いため汚れが残りやすい
猫の場合
猫については、歯・口腔疾患の請求割合が全体で2.4%と、犬よりも低い傾向にあります。ただし、猫は症状が現れにくいため、注意が必要です。
- 他の品種に比べ歯周病や歯肉炎に罹りやすい品種
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混血猫
▼歯周病/歯肉炎(乳歯遺残に起因するもの含む)の請求
年間診療費の平均値 44,503円 個体差が大きく、歯並びや顎の発達にばらつきがあることで口腔トラブルが起こりやすい
- 出典:『アニコム家庭どうぶつ白書2024 第2部 どうぶつの疾患統計』
歯周病が引き起こす全身疾患のリスク
アニコムの最新研究では、犬の歯周病が全身の健康に与える影響について、注目すべき発見がありました。特に、口腔内の歯周病に関連する細菌が体内に入り込むことで、さまざまな病気のリスクが高まることが分かってきています。
年齢と共に高まる歯周病関連菌のリスク
調査によると、犬の腸内から歯周病に関連する細菌が検出される割合は、年齢が上がるにつれて増加していることが確認されています。これは、加齢により口腔内の免疫力が低下し、歯周病関連菌が体内に侵入しやすくなるためと考えられます。
高齢になるほど口腔ケアの重要性が増すのは、単に歯の問題だけではなく、全身の健康維持のためでもあるのです。
歯周病関連菌が病気リスクを押し上げる
さらに、歯周病関連菌を1種類でも保有している犬は、保有していない犬と比較して、すべての年齢層で病気にかかりやすいという傾向が判明しています。
この結果は、歯周病が単なる口腔内の問題ではなく、全身の健康状態に深く関わる疾患であることを示しています。定期的な口腔ケアが、愛犬の健康寿命を延ばすための重要な要素となるのです。
- 歯周病が影響を与える可能性のある疾患
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- 全身性疾患
- 消化器疾患
- 呼吸器疾患
- 内分泌系の疾患
- 肝胆膵系の疾患
- 血液および免疫疾患
- 泌尿器疾患
- 神経疾患
- 歯および口腔内の疾患
- 眼および付属器の疾患
- 筋骨格系の疾患
- 出典:『アニコム家庭どうぶつ白書2024 第3部 歯周病関連菌と疾病の関係』
歯周病の予防法は毎日のケアがカギ
犬や猫の歯周病の予防には、毎日のオーラルケアがとても大切です。人間と同様に、プラークの蓄積を防ぐことが根本的な対策となります。
家庭でできる口腔ケアのポイント
毎日のホームケアが歯周病予防の第一歩です。ペットの性格や生活スタイルに合った方法を選び、無理なく習慣化することが大切です。
歯磨きの基本
- ペット用歯ブラシを使用人間用は毛が硬すぎるため、
ペットの口腔内を傷つける恐れがあります。ペット専用のものを選びましょう - ペット用歯磨き粉フッ素入りの人間用歯磨き粉は中毒の危険があるため、必ずペット用を使用してください
- 段階的な慣らしいきなり歯ブラシを使わず、
指で歯茎を触ることから始める - 毎日の継続理想的には毎日、
最低でも週3回は行うことを推奨します
その他のケア用品
- デンタルガム噛むことで歯垢除去効果を期待
- 歯磨きシート歯ブラシが苦手な子に有効
- 水に混ぜるオーラルケア用品飲み水に混ぜるだけの手軽さ。ただし、使用成分や好みで飲まなくなる子もいるため注意
プロによる歯科検診・スケーリングの頻度と効果
家庭でのケアだけでは取り切れない歯石や歯周ポケットの汚れには、動物病院での専門的な歯科検診・処置が有効です。定期的なプロのチェックにより、初期段階での発見・対応が可能になります。
犬種やライフスタイルによる検診頻度の目安
- 小型犬・短頭種(チワワ、トイ・プードル、シー・ズーなど)歯垢がたまりやすく、月1回の口腔チェックや年2回以上の歯科検診が望ましいです。
- 中〜大型犬(柴犬、ラブラドール・レトリーバーなど)歯のすき間が広く通気性がよいため、年1回の検診を基本にしましょう。
- 猫(特に短頭種や混血猫)保険請求データでは混血猫のリスクが統計的に高く、スコティッシュ・フォールドやペルシャなどの短頭種は顎の構造上、歯が密集しやすいため歯周病リスクが高いとされています。これらの品種では年2回のチェックが理想です。
- 硬いおやつ・おもちゃを好む子や、歯磨きができていない子口内に負担がかかるため、より頻繁な検診でリスク管理を行いましょう。
動物病院の主なケア内容
- 全身麻酔下でのスケーリング(歯石除去)
- ポリッシング(歯面研磨)
- 歯茎の下の深部洗浄
- 必要に応じた抜歯処置
- Check
- このような定期的なプロによるチェックと処置によって、歯周病の早期発見・早期治療が可能になり、将来的な抜歯や全身疾患のリスクを軽減できます。
年齢別の予防対策と注意点
ライフステージごとに歯の状態やケアの重点も変わります。成長期・成熟期・高齢期に応じた予防対策を知っておくことで、愛犬・愛猫の口腔トラブルを早期に防ぐことができます。
子犬・子猫期(生後6ヶ月~1歳頃まで)
- 乳歯の生え変わり時期の観察
- 口元を触ることに慣らす訓練
- 乳歯遺残の早期発見
成犬・成猫期(1〜7歳)
- 定期的な歯磨き習慣の確立
- 年1回の歯科検診
- 歯垢・歯石の蓄積チェック
高齢期(7~8歳以上)
- より頻繁な検診(年2回以上)
- 麻酔リスクを考慮した治療計画
- 全身疾患との関連性チェック
犬・猫の歯周病に気づいたらどうする?受診の目安と対処法
「口臭が気になる」「ごはんを食べにくそうにしている」など、いつもと違うサインに気づいたら、早めの対応が大切です。ここでは、歯周病が疑われるときの受診のタイミングや、適切な動物病院の選び方についてわかりやすく解説します。
こんな症状が出たらすぐに動物病院へ
以下の症状が見られたら、歯周病の疑いがあるため、早めに獣医師に相談してください。
- 緊急性の高い症状
-
- 口臭が急激に悪化した
- 歯茎から出血している
- 顔が腫れている
- 食事を嫌がる、食べにくそうにしている
- よだれに血が混じっている
- 歯がぐらついている
- 注意が必要な症状
-
- 以前より口臭が気になる
- 硬いものを噛みたがらない
- 口の片側だけで噛んでいる
- 歯茎の色が変わった(赤い、白い)
- 口元を触られるのを嫌がるようになった
何科を受診すべき?歯や口のトラブルに強い動物病院の探し方
まずは、かかりつけの動物病院に相談するのが一般的です。多くの病院では歯科トラブルに対応しており、軽度〜中等度の歯周病であれば治療できる場合がほとんどです。
ただし、以下のようなケースでは「歯科診療に力を入れている病院」や、口腔外科の設備が整った専門病院を探すのがおすすめです。
- こんなときは専門病院も検討しよう
-
- 歯を抜くなどの外科処置が必要なケース
- 高齢や持病により全身麻酔リスクが高い場合
- 先天的な顎・歯の異常がある場合
歯科治療に強い動物病院を探すには、以下のような方法があります。
- かかりつけの獣医師に紹介を依頼する
- 小動物歯科などの認定をとっている病院を調べる
- 動物病院のホームページで「歯科治療」や「口腔外科」の記載を確認する
- GoogleやSNSでの類似症例の治療実績や口コミ評価を参考にする
歯周病の治療費はどのくらい?【費用目安】
歯周病の治療費は、症状の進行度や治療方法によって大きく異なります。以下では一般的な治療内容とその費用相場をご紹介します。
Check1症状別の治療費の目安
- 軽度(初期ケア中心)
-
約20,000〜50,000円
歯茎の軽度な炎症や汚れの蓄積に対して、全身麻酔下での口腔クリーニングや予防的な処置(軽度の歯肉炎ケアや初期の歯垢除去など)が行われます。
- 中等度(進行性の炎症治療)
-
約50,000〜100,000円
歯周ポケットの洗浄や歯茎の炎症治療など、複数回の通院治療が必要になることもあります。
- 重度(高度治療・外科手術)
-
約100,000〜300,000円
歯の根元や骨にまで進行した場合、複数本の抜歯や外科手術、入院が必要になるケースもあります。
Check2全身麻酔にかかる費用と注意点
- 麻酔費用
-
- 基本料金:約10,000〜30,000円
- 麻酔前検査:約5,000〜15,000円
- モニタリング:約5,000〜10,000円
- 合計:約11,000~55,000円
全身麻酔を伴う治療の場合、治療費と麻酔費用を合わせて、総額で3万円〜35万円程度かかるケースもあります。 全身麻酔には一定のリスクが伴うため、術前に血液検査や生体モニタリングを行うことで安全性を高めます。シニア期のペットでは特に慎重な対応が求められます。
費用相場は複数の動物病院の情報をもとにした目安です。実際の診療費は動物病院の場所や設備、治療方針によって異なることがあります。一般的な目安として参考にしてください。費用の詳細は、かかりつけの動物病院や専門医に事前に確認するのが安心です。
歯周病の治療はペット保険で補償される?
ペット保険において歯科治療の補償は、保険会社や商品によって大きく異なります。歯周病などの歯科治療は、多くのペット保険で補償対象外とされているのが現状です。
これは「予防可能な疾患」とみなされたり、「美容目的」と判断されることがあるためです。また、治療費が高額になりやすい点も要因のひとつです。
ただし近年では、歯の損傷や全身疾患との関連がある重度の歯周病など、一定の条件下で補償対象とする保険商品も登場しています。愛犬・愛猫の健康状態や年齢に合わせて検討するとよいでしょう。
まとめ|ペットの歯の健康には予防と備えが重要
犬や猫の歯周病は、進行するまで気づかれにくく、放置すれば全身の健康に影響を及ぼすリスクもあります。しかし、毎日のデンタルケアや定期的な歯科検診によって予防は可能です。
一方で、いくら気をつけていても、年齢や体質によって歯周病が進行してしまうケースもあります。そうした万が一に備えるためにも、歯科治療が補償対象となるペット保険の活用が有効です。
現在では、歯周病などの処置もカバーする保険商品が登場しています。内容を比較し、ご家庭に合った保険を選ぶことで、より安心してペットの健康を守ることができます。
大切な愛犬・愛猫がずっと元気に過ごせるように、「日々の予防」と「いざというときの備え」の両面から、歯の健康をサポートしていきましょう。
この記事では一般的なペット保険に多いケースを紹介しています。また、診療費は動物病院や地域によって異なります。実際の保険内容は各保険会社の最新の約款をご確認ください。
【アニコム損保】W2508-001854
- 執筆者
- 染谷 弥幸(1級ファイナンシャル・プランニング技能士/株式会社アイ・エフ・クリエイト)
「安心できる金融商品選びをわかりやすくカンタンに」という当社のミッションを胸に、お客様が自分に合った商品をみつけるための情報をわかりやすく紹介します。